ゴゴジャンTakizawa レター

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ビックピクチャーとマーケットのメカニズムは車の両輪

2017年3月30日木曜日

「花の乱」ダントツの名作と視聴率の関係




長らくこの大河ドラマは大河史上最低の視聴率だったと聞く。
この番組が放映されたのは、渡米して2年目の1994年。
アメリカで日本のTV番組を観るのが困難だった頃。

当時既にシカゴにレンタルビデオはあったが、
50歳を越えた三田佳子が、25歳の日野富子を演じることに無理を感じた。
結局、大河ファンだった自分自身も、全く観なかった唯一の大河ドラマだった。

それを今になって観ようと思ったのは、
「4thターニング」と「応仁の乱」に共通性を感じたからだ。

今更グタグタ言ってもしょうがない。
ただ批評を半ば本業にしている自分としては、
この番組を知らず、大河ドラマの批評をしたのは、
自分の無知を晒した恥だった。

ずばり、このドラマの質の高さは、他に比較になるTVドラマが思い浮かばない。
強いていえば、思いつくのはHBOの”ゲームオブスローンズ”ぐらい。

「花の乱」には息を呑む、或いは手に汗握る迫力と展開力はない。
しかし時代のターニング期における人間の性。それが齎す「混沌」を描いた点は同じ。

そしてゲームオブスローンが、莫大な資金をかけたビジュアル性を誇るなら、
「花の乱」は、日本の中世末期の時代劇でありながら、耽美さとファンタジーを、
シュールレアリズムの幻想で追求した挑戦的作風。

演技面では、歌舞伎から、団十郎、海老蔵親子に加え、
松本幸四郎、松たかこ親子の独特の台詞回し。
能・狂言から、「細川勝元」を演じた野村万斎の体幹が美しい。
そこに、個性豊かな実力派テレビ俳優がかみ合っている。

そしてなんと言っても、歌舞伎とテレビを又にかけた
萬屋錦之介の「山名宋全」は圧巻だ、、。

市川森一シナリオもすばらしい。
鬼女の内面を隠していた頃の富子が、
慈悲の心で飢えた農民を助けようとするシーン。

将軍でありながら、現世の残状に目を向けない夫義政に
慈悲の心をせがむ富子に団十郎の義政が言い放つシーン。

「見せ掛けの慈悲は民のためではなく己のため、
 そんなもので一体世の中の何を救えるというのだ」

歴史教科での一般的な義政の解説は、義満の金閣にあこがれ、銀閣を建立したものの、
現世を省みず、趣味の世界に没頭、応仁の乱を引き起こした愚かな将軍。
富子はその義政の性格につけこんだ悪女、、

しかし市川森一氏の脚本は、
より人間の心理の本質を突いたシェークスピアに近いと思う。

個人的には「花の乱」での義政と富子のやりとりは、
ビルが駄目な夫を演じ、女性初の大統領を目指したヒラリーを引き立たたせた
2008年以降のクリントン夫婦のドラマを見ているようだった。

彼らの傀儡だったオバマ政権の8年。今アメリカにも「応仁の乱」が迫っているが
ゲームオブスローンズのファンで、まだこの大河をみていなら、
ぜひ視聴すべきだろう、、


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