ゴゴジャンTakizawa レター

ゴゴジャンTakizawa レター
ビックピクチャーとマーケットのメカニズムは車の両輪

2016年4月21日木曜日

生き残れる人





ちまたでいろいろ言っている経済学者や法学者、

あるいは1%のエリート層になるには必須とされるビジネススクールを出た人たちが、

宇宙飛行士になって、火星に行くことはないかもしれない。

でも本当に必要な学問とはなんだろう。

一度自然災害が起きれば、現場では、金融のエリートは役に立たない。

本当にサバイバルになれば、まずは自分で食物を確保できる知識が必用だ。

若者よ、今の自分達に、その能力があるのか。

こういう時こそ考えよう。





  米国から眺めたTPPの本質   時事通信社  Agrio 0106 号(2016/04/19)

                    シカゴ在住 ストラテジスト 滝澤伯文

昨年10月、環太平洋連携協定(TPP)大筋合意の大仕事を 終えた当時の甘利明経済再生担当相のスピーチを聞きながら、元米連 邦準備制度理事会(FRB)議長のポール・ボルカーの次のようなコ メントを思いだした。「貿易は10年越しの協定より10分の為替相場の 方が重要(Paul Volcker once noted that trade is more affected by 10 minutes of movements in exchange rates than by 10 years of trade negotiations.)」―英フィナンシャル・ タイムズ紙コラムより引用。

市場原理からして、もしTPPが本当にフェアな貿易協定なら、国内 総生産(GDP)が圧倒的な米国が、GDPが少ない国々に対し、 自由貿易協定を結ぶ理由は思い浮かばない。つまりTPPの本質は、 貿易交渉ではないとずっと考えてきた。

< ◇米国が目指す新たな太平洋ドクトリン >

TPPは2005年に、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポール の4カ国が自由貿易協定である「P4協定」に調印してスタート。08年 には米国(ブッシュ政権)などが加わった拡大交渉が始まり、13年に 日本も交渉に加わった。日本には明らかに米国の圧力があったが、奇しくも10年で締結されたことになる。

では 共和党伝統の自由貿易思想から始まったTPPを、なぜ自由貿易には反対の民主党のオバマ政権が引き 継いだのか。ヒントは甘利大臣のスピーチにあったと思う。膨大な作業を経て妥協点を見出した大筋合意後の 記者会見で甘利大臣は「民主主義陣営の結束」という表現を用いた。本来は貿易がテーマのはずのTPP で、「イデオロギー」のコメントだった。

この違和感は、TPP交渉が単なる貿易交渉から、オバマ政権のレガシーとして米国が目指す新しい太平 洋の「ドクトリン」に日本が参加し、協力するという意味合いのものに変質したことからきている。ところがこうした 変質は、日本よりもむしろ米国内でTPPを推進してきたビジネス関係者に不満を残した。任期が少なくなっ たオバマ政権は妥結そのものを急ぎ、TPPを後押ししたビジネス当事者たちが期待した医薬品分野などでの 条件を大幅に譲歩してしまったからだ。


結果、各ビジネスの利権を代弁する議員はTPPへの肩入れ見直し、草の根レベルでは、保守層は協定 が米国の独自性を弱めると反対。リベラル層はインターネットなどでの自由な表現を奪われると反対。そして労 働者は、仕事が奪われると反発している。

 <◇選挙と自由貿易協定の関係>

 ところで、00年の大統領選挙で民主党候補のアル・ゴアが共和党候補のG・W・ブッシュに負けたのは、騒 動となった「フロリダのリカウント」もあるが、クリントン政権で副大統領として関わった米国、カナダ、メキシコが参 加する北米自由貿易協定(NAFTA)の影響で、最重要州のオハイオで負けたことが大きかった。

 NAFTAも共和党のレーガン、ブッシュ政権が着手。そして1994年、民主党のビル・クリントン大統領が 調印したものだ。2008年のオハイオ州での民主党の予備選では、オバマは「アメリカはNAFTAで100万 人の雇用を失い、オハイオも5万人の雇用を失った」と対立候補だったヒラリー・クリントンを攻撃した。

オハイオ州の人口動態は低賃金・非高学歴者が多く、民主党に限っていえばヒラリーに有利だったため、ヒラ リーはオバマを退けた。今年もオハイオでサンダースに勝った。しかしサンダースにオバマ政権でTPPを推進した 過去を叩かれ、ミシガン州では敗北している。

日本では、ヒラリーは大統領になれば、再びTPP推進に転じるという見方がある。だがトランプとサンダース の現象を見る限り、理論面でTPPを推進したブルッキングス研究所の考えが一般国民に浸透するには、よ ほど中国の脅威が高まり、米国が団結することが必要となるような場合のみではないか。しかし次の政権がまず 直面するテーマは、中国よりも中東やイランだろう。

<ならばTPPはどうなるか>

米国の戦争史をみると、自由貿易の概念で、単発的に植民地拡大戦争に突き進んだ共和党と(米西戦 争、イラク戦争)と、平和を優先し、自由主義や人権のドクトリンを掲げながらも、皮肉にもより大掛かりな戦 争に動いた民主党(第一次・第二次世界大戦、ベトナム戦争)に分かれる。

第2次世界大戦後、トルーマン大統領は共産主義陣営を封じ込めるため、北大西洋条約機構(NAT O)を中心に「大西洋ドクトリン(いわゆるトルーマン・ドクトリン)」を敷いた。一方、オバマ政権の1期目はリ ーマン・ショックという金融危機の処理に忙殺されたが、2期目はTPPに取り組むと同時に、中国には 「Containment&Engagement政策(関係は維持し、閉じ込める)」を打ち出した。

このように、TPPはオバマ大 統領の「太平洋ドクトリン」の根幹ともいえる。 しかし、「大筋合意されたドラフトがそのまま議会で審議にかかる可能性は少ない」と嘆くのは、民主党の重 鎮のローレンス・サマーズ元財務長官だ。

実はサマーズほどTPPの現状を語るにふさわしい人はいない。自身 も国家経済会議(NEC)委員長としてオバマ政権にかかわり、同政権を知り尽くしている。クリントン政権 ではNAFTAを推進したロバート・ルービン元財務長官に近く、現在のマイケル・フロマン通商代表部(U STR)代表とは懇意の仲だ。

彼はずっとTPPを援護してきた。そのサマーズは今年1月にニューヨークで行 われた、2016年の世界の政治・経済リスクの分析をテーマとした外交問題評議会(Council on foreign relations)のシンポジウム(HPは文末)で、TPPに関する質問に次のように答えている。 「現状大統領になる可能性のあるヒラリー、トランプ、クルーズ、サンダースの誰もTPPを支持していない。 これは厳しい。

もし可能性があるとすれば、選挙が終わり、新しい議会が始まるまでの2カ月間に審議がされる かどうかだ。希望は捨てないが、チャンスは本当にわずかだ」 この現状を踏まえると、個人的にはTPPが今のまま生き残る可能性は感じない。ただし共和党から大統 領が出て、議会も共和党優位が続いた場合、よりアメリカンビジネスに有利な新しいTPPが再出発するか、 民主党ヒラリー政権なら選挙公約上、TPPの名前を変えてでも、新しいドクトリンを目指す動きは復活する とみる。

<◇無形資産投資が有形資産投資を上回った意味>

 最後に、現在のアメリカの国内総生産(GDP)に占める民間投資の有形資産投資と無形資産投資の 割合を紹介しておこう(グラフ1)。 このグラフは、米国の投資活動の対象として製造業などの「有形資産(Tangible)」と、金融・サービス業 などの「無形資産(Intangible)」のどちらがどの程度ウェートが高いかを示すものであり、その比率はクリントン 政権下で、無形資産が有形資産を逆転した。

NAFTAの影響を受けて有形資産を製造する工場が失わ れる一方、金融や弁護士などの無形資産型の仕事(雇用)が創出されたという評価だ。一方、日本のTP P交渉の報道を米国からみる限り、農産物や自動車といった有形資産が、自由貿易協定でどれだけ物量的 優位な条件を勝ち取るかといった観点だけしかうかがえない。

またTPPの環境条項の野生動物の項には、象牙の取引や希少動物の保護強化に加え、「オーバーフィ ッシング」防止措置の記載もある。ここは日本の漁業関係者にとっても気になる条項ではないだろうか。




いずれにしても、の最終的には知的所有権といった定義の難しい問題に加え、インベスターが国家を訴える 権利というべき「投資家・国家間の紛争解決(ISDS)条項」(外国企業が進出先の制度変更で損害 を被った場合に、相手国を提訴できる枠組み)など、伝統的に真面目で性善説を前提とする日本人の感覚 にはなじまない世界にどう対応するのか。

TPPへのチャレンジは、実はここからが本番だろう。(敬称略) <参考:大統領選挙までのTPP審議の可能性を否定する上院トップのマクニール議員>


https://www.washingtonpost.com/politics/mcconnell-warns-that-trade-deal-cant-pass-congre ss-before-2016-elections/2015/12/10/b8151f26-9f66-11e5-8728-1af6af208198_story.html?w pmm=1&wpisrc=nl_headlines <参考:なぜ皆がTPPに反対なのか> https://www.washingtonpost.com/opinions/kill-the-dispute-settlement-language-in-the-transpacific-partnership/2015/02/25/ec7705a2-bd1e-11e4-b274-e5209a3bc9a9_story.html <参考:TPP成立に疑問符のサマーズ> http://www.cfr.org/global/assessing-global-economic-political-risks-2016/p37458 http://www.bloomberg.com/politics/trackers/2016-01-25/larry-summers-skeptical-of-tpp-pas sage-this-year <参考:環境条項の野生生物の関係記事> http://www.nytimes.com/2015/10/06/business/environme

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